2010/01/15 ウィーン公演レポート 「楽友協会ホール思い出の一端」

楽友協会ホール思い出の一端

楽友協会ホール

 夏以降、「オーストリア・ウィーン」での海外演奏、半信半疑、実感の湧かぬまま秋を迎え、11月以降ようやくエンジンがかかり実現したウィーン演奏旅行。お子様や新聞紙面等により多くの情報が提供されたことと存じますが、一緒に随行した一員として実際その場での状況を文書に変えてご報告申し上げ、あの感激を生涯の宝として大切な思い出としていただきたい。

(石見智翠館高等学校 校長 竹迫繁)?

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 現地時間12月22日火曜日。11時過ぎにホテルを出発し、昼食は市内のレストランに直行した。メニューはステーキとジャガイモ、デザートはリンゴの蜜の入ったクレープだ。皆さんよく食べている。古い木造2階建てのレストランで、なんとなく昔の古い小学校の雰囲気が伝わって来る。

DSC01368_s 13時30分に楽友協会ホールに到着。生徒は直ちにリハーサルへと移ったが、時差ボケのせいか、疲れと睡眠不足のせいかパッとしない。私にはよく解らないが指揮者の谷口先生の口から愚痴とも不満とも取れる言葉が聞かれる。午後2時から6時までの4時間休憩なしの特訓リハーサルが延々と続いた。

 食事は幕の内弁当、といっても大半は小さな鶏のから揚げ。水でもって流し込み、一早く会場へ、会場入り口には7時の開場待ちの来客がすでに並んでおられる。7時を過ぎるとゆっくりと、主に中高年のご夫婦がチケットの列と座席番号を探して席に着かれた。

江の川響友会のコンサートに来られた観客?7時30分までに2000席の全席がほぼ埋まり、7時32分に拍手の中で生徒が入場。7時35分谷口先生の指揮が始まった。曲は「セレモニアル・マーチ」、司会も紹介もないが、(立派なドイツ語で印刷されたプログラムが配布済みである。)いきなり演奏に入られたが聴衆をすぐに惹きつけられ、終わったときは76回に及ぶ拍手。鳴り止まぬ拍手をついついこの私は数えてしまったのである。2曲目は「ラザロの復活」、谷口先生まさに熱演、スマートな姿勢、柔らかいしぐさ、そして力強いタクト、静かな曲に乗せての演奏、観衆の誰もがウットリと真剣に静聴。まさに魅了、拍手が凄い、鳴り止まない。谷口先生もうひと踏ん張り、曲は「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、指揮は軽快、リズムも軽快、手の動きが見事、生徒も乗っている。凄い拍手、こちらの人は本当によく拍手をされる。日本であればせいぜい20から30回まで、3曲ともに80回前後の拍手。?

 今度は、田儀先生の登場だ。藤井君と三谷さんの二人が最前列に出て交互にユーホニュームのソロ、曲は「ユー・レイズ・ミー・アップ」、ゆったりとした曲の流れと優しい音色、聴衆は私語一つなく聞きいっている。涙を流して聞いていらっしゃる紳士・淑女も目につく。聴衆者のマナーの良さに感心する。大きな拍手を頂いた後は軽快な「コーラルブルー」、木琴を軽やかに叩く、寸分の狂いもなく、正確に、速い速いまさに超特急、素晴らしい、静間さんの身の軽さ、手の動きと音に聴衆は魅了され、2階席も3階席も皆静間さんの手に注目されている。大きな拍手を頂いている。?

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DSC_0349_s  田中健一先生登場、小泓君いきなり中央に出て会釈、さっと笛を横にして口にあてると神楽舞の音色、鉦や太鼓の八調子、吹奏楽と一体となる。そこへ所狭しと四頭の大蛇が出て来る。首を振り、威嚇をし、所作がいい、今にも跳びかかってきそうな気配を見せる。ウィーン子に初見参、巻いたどくろが縦・横に、縦横無尽の型をつくり見せる、テンポの良さとマッチして四人の舞手もいつもより本当に素晴らしい(練習の成果が如実に表れている。)。オロチにフラッシュ(写真は禁止のはずだがウィーン子はおかまいなし)中々勇壮、いつにも増して迫力がある。音楽と一体になっている。両サイドに横笛の女生徒2名演奏後に終了。

 終わっても拍手が鳴り止まない。日本の地方の伝統郷土芸能がどのように目に映り、捉えられたのか解らないが、鳴り止まぬ拍手が頂けたということは、その場の空気からかなりの賞賛に値したものと解釈できる。3人の女子生徒がオロチの頭部を外すとねぎらいの拍手が一段と大きくなった。まだ拍手が続いている。1~2分遅れて残りの1頭の女子生徒がオロチの頭を外し聴衆に笑顔で一礼をした。お愛嬌として受けたのか拍手がまた一段と大きくなりしばらく鳴り止まなかった。6曲を演奏し休憩に入った。

おいしそうなケーキが並ぶ ウィーンの人々はこの休憩時間は社交の場となり、お互いの知人や友人、恋人・家族がグループとなり、ワインやビール、シャンパンにコーヒー・ケーキを嗜好しながら談笑している。私は、この機を利用して日本の高校生、私の学校の生徒の演奏は如何でしたかと3つのグループに聞いて回った。答えは各グループともに「素晴らしい」との返答が帰ってきた。 

 後半の部、田中先生登場、マーチ「青空と太陽」、軽快である。本校の生徒の演奏がウィーンの人達に気に入られたらしい。次の曲は「ウィーンはいつもウィーン」聴衆は自国の音楽とばかりに息を弾ませ体をゆすり、とうとう椅子から立ち上がり肩をゆすってリズムにあわせている。ブラボー・ブラボーの大コール、拍手が一段と長かった。?

DSC01381_s 次は田儀先生、「ソリすべり」に続いて「クリスマスメドレー」、まさにクリスマスコンサート。「楽友協会ホール・黄金の間」、今年最後のコンサート。日本とオーストリア交流年(140周年)2009記念事業、大盛会である。生徒達も楽しく演奏している。田儀先生もこのホールで4曲指揮、所作も大分板に付いてきている。背丈も高く手も長い、力強く全体にキビキビとタクトがよく動く、楽しく軽快、上手い、上手い、確実に上達している。?

 谷口先生登場。おじぎの所作から落ち着きと風格が伺える。曲は「メリーウィドウ・セレクション」ふところが深いのか肘がシャープにきれる。生徒を調子に乗せて優しく・そして繊細に、腕、タクトの動き、足幅のバランスが何ともいえず素晴らしい。肘から手首、そして指先までしなやかに映る。拍手・拍手更に拍手。?

DSC01405_s 田中先生、「スベイン狂詩曲」ハープの音色、繊細に撫でる指先とあわせて何とも心地よい、聴衆の皆さんうっとりと聞き惚れている。柔軟力を入れた演奏は80数回の大きな拍手。続いて最後に「エルクンパンチェロ」IWAMICHISUIKANの傘がカラフルな色彩とマッチして開く、ラテンのリズムに乗りテンポがいい。田中先生手拍子の催促、聴衆は総立ちで手拍子、フルート奏者前に出て演奏、コミカルで軽快、凄い拍手、全員立ってアンコール。それに応えて生徒達は手を振って応じている。「ブラボー」・「ブラボー」観衆総立ち。圧巻。(感激で涙がこぼれそう)これほどのアンコールは見たこともない。耳の肥えているウィーンの音楽愛好家が本気で要求している。まだ全員総立ちで要求が続いている。凄い、本当に凄い、先生方や講師の先生、そして部員の皆さん、こんな感激は経験したことはなかったのでは。とにかく素晴らしい。?

DSC01379_s 遂にアンコール曲に入る。田儀先生登場。「アイリッシュ・ウオッシャ・ウーマン」、ピッコロが軽やかに奏でる。何か洗練された騎兵隊の馬が軽やかに足踏みをしているように聞こえる。リズムもいい、ピッコロとフルート6~7名の皆さんが一緒に演奏。素敵という表現がぴったりだ、本当に聴衆を魅了している。音楽は何故これほどまでに人を惹きつけられるのか、自国だけでなくオーストリア・ウィーンのこの満員の聴衆の人々を。まだ拍手が鳴り止まない。また、アンコールの手拍子だ。?

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 谷口先生颯爽と指揮台へ、普段は小さな体格だけど今は大きく目に映る。曲は「雷鳴と電光」、音楽が壮大でスマート、かつスケールの大きさを感じる。木琴と大太鼓の出番だ。今回のこのコンサート、江の川響友会(石見智翠館高等学校)、大成功、アッパレ・アッパレ大感激、聴衆を魅了。聴衆者も耳は肥えているが、良い演奏には感激と喜びを素直に表現している。谷口先生、最後とばかりに、待ちに待っていた憧れの舞台で軽快に手がよく動く、回る、回る、強弱つけて、またまたアンコール、大喝采がとまらない。?

DSC_0457_s アンコール3曲目、「ラデッキー行進曲」、毎年のニューイヤーコンサートでの最後の演奏曲、日本で云えば、「うさぎ追いしかの山~故郷」のような国民的な曲らしい。田中健一先生が満面の笑みで指揮台に上がられた。聴衆は立ち上がって手拍子だ。メロディーは軽快で力強い。まさに演奏している生徒、指揮者、聴衆の全員が一体となっている。手拍子が続く、指揮をしている健一先生が、タクトを振りながら身体を回転させて客席に笑顔で振り向かれる、誰もが乗りに乗っている。2度3度と振り向かれる。本当に力強い。凄い、凄い拍手!ブラボー、ブラボー、ブラボー、またアンコールの要求、拍手で3分くらい要求、今度は館内総立ち!スタンディング・オベーション状態、拍手が鳴り止まない5分、6分、7分、まだ続いている。誰も帰ろうとしない、凄い、凄いというしか言葉が見あたらない、3人の先生が舞台の中央に出て何度もお礼と感謝の会釈。ようやく通路に人の流れができた。?

DSC_0455_s 終了後、本校常務理事「久保田先生」ご夫妻と一緒に、先生方・生徒の皆さんの控え室に慰労の挨拶に伺った。あまりの興奮と感激に胸が熱くなり不覚にも涙が頬に伝わった。先生方と無言の握手。良かったぞ!言葉が続かない。久保田先生が生徒の皆さんに挨拶。次に私が挨拶、「素晴らしかった、皆さん有難う、最高の感激と喜びを頂いたね、」胸にこみ上げる熱いものがあり多くを語れない。谷口先生もねぎらいの言葉をかけられ、その後、健一先生が生徒に賞賛の言葉をかけられた。特に3年生に対して「ご苦労さん、夏のどん底から今日までの頑張り、最後に最高の感激と最高の思い出を全員で授かり有難う。」涙で言葉が続かない。生涯もう二度とこのステージでの演奏はないだろう。こういう機会に恵まれ実施できたこと自体信じられないが、まさに高校時代の最高の喜びと思い出になるのではないだろうか。?

 最後に、保護者の皆様を始め、国や県・江津市、そして沢山の方々のお力とご好意とご声援により実施できた今回のウィーン公演、ここに心からお礼と感謝を申し上げ、ささやかながら報告の一端としたい。

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